- 1ユニリーバの2026年上期USGは4.8%(数量4.2ポイント、価格0.6ポイント)。決算発表日に株価は8.45%上昇。
- 2アイスクリームは2025年12月に分離、食品はマコーミックと統合予定(448億ドル、2027年半ばまで)で、ホーム&パーソナルケア専業の会社が残る。
- 3下期は4〜5%成長・価格主導のガイダンスで、価格寄与は概ね2〜3%へ上昇、数量は約2%へ減速する計算になる。
- 4ハンドオフ・テストはこの切り替えを10月28日のQ3で採点:価格+1.5%以上、数量+2.0%以上、USGが帯の中、ガイダンス維持。
- 5成長をけん引するのは新興国(7.0%)とパワーブランド(6.0%)。先進国は1.5%、欧州はマイナス。
Strengths
- 上期USG 4.8%、うち数量4.2pt
- パワーブランド+6.0%
- 新興国+7.0%、インド+8%
- 利益率20.3%、2029年まで60億ユーロ還元
Weaknesses
- 先進国+1.5%、欧州−0.9%
- 為替で売上高は+0.5%
- ホームケアの利益率15.8%
- 上期の価格寄与わずか+0.6%
Opportunities
- 食品売却後のHPC専業化
- Dr. Squatch、Wild、Grüns
- インドの数量主導の成長
- ビューティー&ウェルビーイングQ2 +8.1%
Threats
- 値上げによる数量減
- プレミアム美容でのロレアル
- マコーミック取引と持分売却
- 新興国通貨
日本ではダヴやラックスで知られるユニリーバは、2025年から2026年にかけて自らを分解してきました。アイスクリーム事業(マグナム、ベン&ジェリーズ、ウォールズ)は2025年12月に分離され、2026年3月には食品事業(クノール、ヘルマンズ)をマコーミックと統合する448億ドルの取引に合意しました。2027年半ばまでに残るのは、ホーム&パーソナルケアに特化した会社です。その間、残った事業はここ数年で最も好調でした。2026年上期の基調的売上成長率(USG)は4.8%、そのうち4.2ポイントが数量で、決算発表日の7月28日に株価は8.45%上昇しました。
気になるのはガイダンスです。会社は下期を4〜5%成長、しかも「価格主導」と見込んでいますが、上期の価格寄与はわずか0.6ポイントでした。本記事では新しいユニリーバの強み・弱み・機会・脅威を整理し、2026年10月28日のQ3トレーディング・ステートメントに向けて一つのテストを用意します。成長の主役を数量から価格へ、失速せずに引き継げるか、です。
ユニリーバの概要
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 2025年度USG | 3.5%(数量1.5%、価格2.0%) | 2025年度決算(2026年2月12日) |
| 2025年度売上高/基調的営業利益率 | 505億ユーロ(−3.8%)/20.0% | 2025年度決算 |
| 2026年第1四半期USG | 3.8%(数量2.9%、価格0.9%)、コンセンサス約3.7% | Q1 2026トレーディング・ステートメント(2026年4月30日) |
| 2026年上期USG | 4.8%(数量4.2%、価格0.6%) | 2026年上期決算(2026年7月28日) |
| 2026年第2四半期USG | 5.8%(数量5.5%、価格0.2%) | 2026年上期決算 |
| 上期売上高/利益率/基調的EPS | 256億ユーロ(+0.5%)/20.3%(+10bp)/1.61ユーロ(+2.4%) | 2026年上期決算 |
| パワーブランド(30ブランド)上期USG | 6.0%(数量5.4%) | 2026年上期決算 |
| 新興国/先進国 上期USG | 7.0%/1.5% | 2026年上期決算 |
| 2026年自社株買い/2026〜2029年計画 | 15億ユーロ(6月5日完了)/60億ユーロ | 2026年上期決算 |
| Q3 2026トレーディング・ステートメント | 2026年10月28日 | ユニリーバの財務カレンダー |
今のユニリーバとは
古いSWOT分析が描くユニリーバは、もう存在しません。重要な変化は四つです。
| 変化 | 時期 | 意味 |
|---|---|---|
| マグナム・アイスクリーム・カンパニーの分離 | 2025年12月6日完了 | アイスクリーム事業は離脱。ユニリーバは19.85%の持分(公正価値18.52億ユーロ)を保有し、最長5年で売却予定 |
| 食品事業とマコーミックの統合 | 2026年3月31日発表 | 食品事業を448億ドル(EV/EBITDA約13.8倍)と評価するリバース・モリス・トラスト。統合後の会社の55.1%をユニリーバ株主、9.9%と現金157億ドルをユニリーバが受け取る。2027年半ばまでに完了予定(Wachtell Lipton) |
| プレミアム買収 | 2025〜2026年 | Wild(詰め替え式デオドラント、2025年)、Dr. Squatch(男性向けグルーミング、2025年6月合意)、Grünsの80%(グリーン系サプリ、7.67億ユーロ、2026年) |
| 生産性プログラム | 2026年上期までに完了 | 2024年3月発表の8億ユーロ計画(約7,500人の削減)が前倒しで完了 |
経営陣も変わりました。CEOは2025年3月1日からフェルナンド・フェルナンデス、CFOはスリニバス・パタク、会長はニルス・アンデルセンの後任のイアン・ミーキンスです。ネルソン・ペルツは取締役に残っており、2026年5月13日の株主総会で再任されました。
4つの事業グループ(2026年上期)
| 事業グループ | 上期USG | 数量 | 価格 | 利益率 | Q2 USG |
|---|---|---|---|---|---|
| ビューティー&ウェルビーイング | 5.9% | 4.5% | 1.3% | 19.5% | 8.1% |
| パーソナルケア | 4.8% | 4.1% | 0.7% | 22.2% | 5.9% |
| ホームケア | 7.6% | 7.4% | 0.2% | 15.8% | 9.1% |
| 食品(売却予定) | 1.2% | 1.2% | 0.0% | 23.3% | 0.2% |
出典:2026年上期決算。目立つ点は二つあります。ホームケアはほぼ数量だけで7.6%伸びましたが、利益率はグループで最も低い水準です。そして利益率が最も高い食品の成長が最も鈍い。つまり、ユニリーバが手放そうとしている部分こそが売上の足を引っ張っていました。
ハンドオフ・テスト
下期を面白くしているのは次の計算です。会社は2026年のUSGを4〜6%、うち数量約3%と見込み、下期は4〜5%、価格主導としています。上期の数量が4.2%なら、通期で約3%に収めるには下期の数量は概ね2%。すると下期の価格寄与は、上期の0.6%、第2四半期の0.2%から、概ね2〜3%まで上がる必要があります。これはガイダンスからの当社の計算であり、ユニリーバが公表した数字ではありません。上期決算は、何が値上げを動かすのかを説明していません。
これがハンドオフ、つまり成長エンジンが一四半期で数量から価格へ切り替わる局面です。日用品の成長ストーリーが崩れやすいのはここです。値上げが速すぎれば数量は計画以上に落ち、遅すぎれば成長率がレンジを割ります。ハンドオフ・テストはQ3発表とその後の各発表で採点します。設計は過去の決算検証から得たルールに従っています(1シグナル1変数、ウェイト付き、水準ではなく差、「未判定」の第三状態、そして先行ガイダンスの項目)。
| # | シグナル(ウェイト) | 合格 | 不合格 | 未判定 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 価格の上昇(30%) | Q3の価格寄与が+1.5%以上 | +1.0%未満 | — |
| 2 | 数量の維持(25%) | Q3の数量が+2.0%以上 | +1.0%未満 | — |
| 3 | 下期レンジ内のUSG(15%) | Q3 USGが4.0%以上 | 3.5%未満 | — |
| 4 | 通期ガイダンス(20%) | USG 4〜6%・数量約3%を維持または引き上げ | USGまたは数量見通しを引き下げ | 数量見通しの言及なし |
| 5 | 新興国のけん引(10%) | 新興国USGが6%以上 | 5%未満 | 新興国の数字が開示されない |
基準の理由:シグナル1は第2四半期から1ポイント超の上昇、つまり下期に必要な分の約半分を二四半期のうち最初の四半期で求めています。シグナル2は数量が5.5%から2%まで落ちても合格とします。その低下はガイダンスに織り込み済みだからです。1%を下回れば、値上げが計画以上に数量を削っていることになります。シグナル3は符号ではなくガイダンスとの帯で判定し、シグナル4を先行指標にしたのは、これまでの検証で株価を動かしたのが当該四半期よりも見通しだったことが多いからです。
テスト自体を否定する結果: このテストは、下期の値上げがユニリーバ自身の選択だと仮定しています。Q3で価格が2%超、かつ数量も4%超なら、問いの立て方が間違っていたことになります。需要が両方を吸収できるほど強く、ガイダンスはハンドオフではなく保守的だっただけ、という結論です。
Q3 2026決算プレビュー:10月28日
2026年10月19日、発表の9日前時点での公開内容です。
| 項目 | 2026年Q2 | 2026年Q1 | 最初に見るポイント |
|---|---|---|---|
| USG | 5.8% | 3.8% | Q3が下期の4〜5%に入るか |
| 数量 | 5.5% | 2.9% | Q2からどこまで落ちるか |
| 価格 | 0.2% | 0.9% | +1.5%を超えるか |
| 新興国 | 8.3% | — | インドとインドネシア |
Q3のトレーディング・ステートメントは売上のみ(利益の開示なし)のため、先行指標は通期ガイダンスの文言だけです。執筆時点でQ3のコンセンサスは見つかりませんでした。
ユニリーバの強み
- 数量主導の成長: 2026年上期のUSG 4.8%のうち4.2ポイントが数量。第2四半期の数量5.5%は会社によれば10年超で最高。
- パワーブランド: 上位30ブランド(ダヴ、ヴァセリン、パーシルなど)は上期6.0%成長でグループを上回る。
- 新興国の基盤: 新興国は上期7.0%(Q2 8.3%)。インド8%(Q2 10%)、中南米7.6%、インドネシア7%。
- 分割中も利益率を維持: 2025年の20.0%に続き、上期の基調的営業利益率は20.3%(+10bp)。
- 株主還元: 四半期配当0.4664ユーロ(+3%)、2026年の自社株買い15億ユーロを6月5日までに完了、2026〜2029年に60億ユーロを計画。
ユニリーバの弱み
- 先進国の出遅れ: 先進国は上期1.5%、欧州は−0.9%、北米は2.7%。
- 為替が成長を相殺: USG 4.8%でも上期売上高は+0.5%の256億ユーロ。第1四半期は為替で売上高が7.7ポイント押し下げられた。
- 薄い利益成長: 上期の基調的EPSは+2.4%、継続事業の希薄化後EPSは−2.5%。
- ホームケアの利益率: 最も伸びるグループの利益率が最も低い(15.8%)ため、成長の構成がグループ利益をあまり押し上げない。
- 価格が不在: 上期の価格寄与0.6ポイントでは、価格主導の下期はまだ検証されていない。
ユニリーバの機会
- 専業化による再評価: 食品事業の取引完了(2027年半ばまで)後、ユニリーバはロレアル、コルゲート、P&Gと同じホーム&パーソナルケアの事業構成になる。
- プレミアム買収: Dr. Squatch、Wild、Grünsにより、男性向けグルーミング、詰め替え、サプリで高成長のプレミアム・D2Cブランドを獲得。
- インド: ヒンドゥスタン・ユニリーバは4〜6月期に10%成長(数量5%)、13四半期で最高。
- ビューティー&ウェルビーイング: 第2四半期8.1%成長。Grüns買収でサプリの比重が高まる。
ユニリーバの脅威
- 価格弾力性: 下期のガイダンスには値上げが必要だが、P&Gの2026年度のオーガニック売上は+1%、4〜6月期は横ばい。
- ビューティーの競争: ロレアルは2026年上期に同一条件ベースで6.8%成長。ユニリーバが買収で取りに行くプレミアム美容の成長そのもの。
- 取引の実行: マコーミックとの統合は承認が必要で2027年半ばまでかかる。さらにマグナムの19.85%と新食品会社の9.9%という二つの持分売却が控える。
- 為替: 成長の源である新興国の通貨が、基調的成長をユーロ建て横ばいの売上に変えてしまう。
- ベン&ジェリーズの余波: 紛争の相手は主にマグナムに移ったが、評判の歴史はユニリーバの名前に残る。
ユニリーバのTOWSマトリクス
| 機会 | 脅威 | |
|---|---|---|
| 強み | SO: 新興国の流通網で、新たなプレミアムブランド(Dr. Squatch、Grüns)を米国外へ広げる。 | ST: パワーブランドの数量の勢いを使い、ポートフォリオ一律ではなくブランドごとに選択的に値上げする。 |
| 弱み | WO: 食品事業の売却資金と専業化で、まず欧州から先進国の成長を立て直す。 | WT: Q3の数量が1%を割るなら、マコーミック取引と持分売却が重なる前に値上げのペースを落とす。 |
TOWSの手順はSWOTからTOWSマトリクスを作る方法を参照してください。
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